ご冥福をお祈りいたします
最初にご病気をされた時から父母を通して経過やご状態をお聞きしておりましたので、医療従事者としてずっと気になっておりました。
コンサートや講座に参加されるお姿は時々、治療の影響でお身体が大変おつらいだろうなと思いながら拝見しておりました。それでも人前ではつらい表情は一切お見せになりませんでしたし、お話した時もご病気になられた事を後悔されたり人生を否定されるような事は一言もおっしゃいませんでした。
私は緩和ケア病棟で、身の置きどころのない患者さんのつらい状態を見ていましたので、お身体がご心配でしたし私自身も今でも病気に対してもの凄く恐怖心を抱えています。ですのでコンサートや講座で拝見するいつも前向きな凛としたお姿がどうしてお出来になるのだろうと不思議でなりませんでした。私はそのお気持ちをどうしてもお聞きしたくてある時「ご病気に対して不安や恐怖がないのか、またご病気とどのように向き合って生きていらっしゃるのか」ということをご質問させて頂きました。
その時の答えは、「先生に救って頂いたいのち。今もいろいろ治療しているけど病気にとらわれていても仕方がないよ。もともと僕は人に会うのが好きだから、ポルシェを買って、日本中をまわり人に会いに行こうと思っている」とありのままに話して下さいました。
また「高麗さんのすすめて下さる服を自分の趣味じゃないからと断るのは、俺ぐらいだろうな。そんなんだから病気になるんだろうね」とも冗談まじりに笑って話されました。
過去には答えはなく、まさに未来にだけ向かって生きていらっしゃるんだなということと、ゆるがない意志をお持ちの方なんだなとその時感じました。
2/14の府中でのコンサートのメッセージで「運命愛」と表現下さいました。引用させて頂きますが「運命愛とは、いかなる境遇であれ自らの生を深く愛し、自己の運命を積極的に肯定し、生き抜こうとする態度」のことで、運命を積極的に肯定することは、肯定できない運命をひとつひとつ明確にし、自己を超えた存在に受け容れられてはじめて乗り越えられます。意志が明確になり、自己の運命愛を受容できます、とございました。きっとご病気の事も先生に受け入れられて自己の運命を積極的に肯定し生きておられたのではないかと想像しますと、まことに希望です。
緩和ケア病棟での私のテーマは、患者さんの病気の進行に伴う先行きの見えない不安を和らげる事ができたら、病気を受容でき、死の恐怖をも乗り越えられるのか、そしてどう生きれば最期の時を幸せに満ちた時間を過ごせるのか、でしたが結局その答えは見つかりませんでした。
しかし、この度ご家族の温かい支えがあり最期まで、コンサートや講座に参加されながら自らの運命と向き合い運命を肯定され人生を全うされましたその生き方は幸せに満ちていると確信し私の生きる勇気につながりました。人は安心できる場と温かい関係があれば、どんな状況でも輝いて生きていけると考え、食と健康、予防、人の最期の時をテーマにこれからも動いて挑戦していこうと考えています。
心より御礼を申し上げます。ありがとうございます。