ありがとうございました。
ピアノの音に耳を澄ませていると、かつて訪れたイランの旅の思い出が次々とよみがえってきました。
ハーフェズ廟では、女子学生に「詩を朗読してあげましょう」と声をかけられ、詩を読んでもらいました。そこでとれたみかんの皮を花の形にむいてくれた優しさも忘れられません。
移動中のバスには、結婚式を終えたばかりの新郎新婦が乗り込み、私たちと一緒に踊りました。
夜、ライトアップされたイスファハンの王宮前の噴水では、ガイドが誇らしげに「どうですか、世界で一番美しい場所でしょう」と語っていた光景が思い出されます。
イランの楽しい記憶は尽きません。
人懐っこく、民度の高い彼らが、どうか無事でいてほしいと願いました。
そして、私たち日本人もまた、虫けらのように根絶やしにされたり、奴隷のように豊かさや精神性を搾取されたりすることのないように。
子供たちが犠牲にならない世界でありますように。すべての人が、それぞれの生命を発揮できますように。
「助けて!助けて!」と心が悲鳴をあげています。その解決の答えは、このピアノの音の中にあると感じ、涙を流しながらそう祈っていると、ふっと体が軽くなり、重荷から解放される瞬間がありました。
第二部では、先生の手元を見つめていました。
鍵盤は、まるで優しく撫でるように、静かに奏でられていました。
ピアノの音に触れているうちに、意識してなかった体の緊張が少しづつ、少しづつ、ほどけていく感覚がありました。
皮膚は、私たちの体の中でいちばん外にあり、世界と触れ合う場所です。
しかし、生きていくために、その感覚をどこか鈍らせてきたのです。
この音に包まれながら、本来の皮膚の感覚を少しずつ取り戻していく、そんな確かな体験をしていると感じました。
ありがとうございます。
三村 馨
