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通れない山


「私有地につき通行できません。」となっているルートを通って、六甲山系長峰山(688m)に登る。 従来の登山路の入り口がフェンスと金網のドアで閉鎖されてはいたが、針金を外して、容易に侵入できる。 私有地でも「通り道」は、通行可能という「許容」が公認されているはず。 昔からの登山路なのだ。 でも、ちょっと気がかりが残る。 それを抱えて、ちゃんとしたルートの急坂を登っていく。 鉄塔を三つ越え、40分くらいで尾根筋に出て、頂上の「天狗塚」に至る。 神戸中が眼下に一望でき、須磨や淡路島の方まで見渡せる。 コースタイム通りに歩け、難なく杣谷峠へ抜けられたので、大いに気を良くする。

歩きながら、リベラル化が格差社会を生み、「メルトクラシ―」(能力学歴支配)が若者や労働者の意欲を奪い、「資本主義」が限界になっている現代社会の憂鬱を噛みしめていた。 橘玲の『無理ゲー社会』を読んでいたからでもあるが、どういうライフスタイルがしかるべきなのかの「答」を模索していた。 著者は、AIを駆使しての「新しい共産主義」ということを紹介しているが、わたしにはついていけないところだ。 そして、「都合の悪い事実」を挙げ、夢や希望を揶揄しているような筆致もいただけない。 冷静に現実を見、ファクトを重視し、情緒に流れないことは賛成だが、優しさや創造性に欠けているように思うからだ。

山歩きの「幸福」を嚙みしめながら、もう一つの「通行不能」地域の新穂高という山(648m)にも行く。 こちらは、「通れない」のでなく「通りにくい」、つまり熟練者向きの難コースということなのだが、そういうことを聴くと余計に通ってみたくなるのは、わたしの天邪鬼なのだろうか。 なるほど道も見つけにくい藪漕ぎで、ピークにも標識もなく、眺望もない。 さらには、その先がすごい下りで、うっかり岩場の頭に出てしまい、ほんとうに通行不能に。 慎重に登り返し、道を見つけるも、とても危険な下り道だった。

 すっかり疲れて、三つ目の登山はあきらめて帰途に就くが、少しくらい「やばい」ことをしなければ、この分断化された現代社会を生き延びる「すべ」は手に入らないのではなかろうかというのが、今日(10/10)の「解」であった。

                            (2021.10.11.記)

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